「前科を隠して就職・転職をしたら解雇されてしまうのか?」

このような、自分の犯罪歴に不安を抱えている方はいるでしょう。

特に履歴書の賞罰欄に前科を書く必要があるのか、迷っている方は多いと思います。

履歴書の賞罰欄に前科の記入必要性、執行猶予と前科の関係などについてみていきましょう。

履歴書の賞罰欄に前科を書く必要があるのか

結論から申し上げますと、

履歴書の賞罰欄には、前科を記載する必要があります。

就職や転職をするときは、履歴書の賞罰欄に前科を記載しなければならないということです。

もし記載しないと、虚偽記載なので採用されたとしても、のちに発覚したときに懲戒処分を受ける可能性があります。

「経歴詐称に対する懲戒解雇」の理由になりうる可能性があるのですね。

最悪の場合、クビになってしまうかもしれないということです。

履歴書の賞罰欄には、正直に自分の前科を記載しなければならないのですね。

履歴書に賞罰欄がない場合は?

しかし最近は、賞罰欄のない履歴書が多くなっています。

賞罰欄のある履歴書のほうが、珍しいのかもしれません。

もしこのような賞罰欄のない履歴書ならば、もちろん前科を記載する必要はありません。

特に自分から前科を報告する義務はないのですね。

前科があり就職・転職が心配だという方は、賞罰欄のない履歴書を選ぶといいのですね。

エントリーシートも前科を記載する必要がある

もし企業が採用で使用するエントリーシートに賞罰欄があれば、自分の前科を記載しなければいけません。

企業側が用意した履歴書やエントリーシートに賞罰欄があるなら、正直に記載しなければしょうがないです。

まれにエントリーシートに賞罰欄があるケースもあります。

この場合は、正直に申告することをおすすめします。

面接で前科を質問されたらどうする?

履歴書やエントリーシートで賞罰欄がなくても、面接で前科や犯罪歴について質問されることがあります。

もし前科や犯罪歴について質問されたら、これも正直に話さなければいけません。

自ら積極的に報告する必要は全くないですが、聞かれたことについては答える必要があるのですね。

前科や犯罪歴を話したくないという気持ちはよくわかります。

しかしこれを隠して虚偽申告・経歴詐称をすると、採用後に発覚したときに懲戒処分を受ける可能性が高いです。

経歴詐称はリスクが高いので、質問されたときは正直に話す必要があるのですね。

そもそも前科とは何なのか?

前科とは

前科という言葉をよく聞きますが、そもそも前科とはどのようなものなのでしょうか。

前科とは、

「過去に刑事事件で、有罪判決(懲役・禁錮・罰金)の刑罰(または執行猶予)を受けたことがある経歴」

です。

ただ前科というのは法律用語ではないため、どの刑罰までが前科にあたるかは意見の分かれるところです。

拘留や科料が前科に含まれるかは、微妙なところなのですね。

この辺りは弁護士の方でも意見が分かれるところなので、はっきりと断定はできません。

何らかの有罪判決を受けたことのある方は、前科の可能性があるということになると言えるでしょう。

逮捕だけでは前科にならない

もし逮捕された過去があったとしても、裁判で有罪判決が下されていなければ、前科はもちろんつきません。

逮捕されて不起訴になったのなら、前科はついていないということです。

有罪判決を受けて初めて前科がつくということなのですね。

赤切符も前科がついてしまう

交通違反で、いわゆる赤切符というものがありますね。

赤切符の正式名称は「道路交通違反事件迅速処理のための共用書式」になります。

重大な道路交通法違反を犯した際に、「赤切符」が切られてしまうのですね。

この赤切符は、前科がついてしまいます。

裁判所で有罪判決を受けることになるので、前科となってしまうのです。

交通違反でも前科がつくことがあるので、注意しなければいけませんね。

書類送検は前科がつくの?

逮捕されても軽微な犯罪な場合、書類送検で終わることがあります。

この書類送検の場合は、書類送検されたのちに検察庁が起訴して裁判所で有罪判決が下されれば、前科となってしまいます。

しかし不起訴となった場合は、前科になりません。

裁判所で有罪判決を受けるかどうかが、前科がつくかどうかの別れ道になるのですね。

執行猶予は前科がつくの?

執行猶予とは、刑の執行を一時的に猶予されているということです。

あくまで刑を猶予されているだけでなので、裁判所で有罪判決を受けたのなら、前科はついてしまいます。

執行猶予と前科は関係がなく、有罪判決を受けたかどうかが問題になるのですね。

前科が消えることはあるの?

よく「前科は5年経ったら消えると」いうようなことがネットでも言われています。

これについては、「消えるともいえるし、消えないともいえる」と考えられます。

前科はあいまいな解釈がされている

そもそも前科とは、先に述べたように法律用語ではないのですね。

法律用語ではないので、はっきりとした規定がないのです。

ですのでネット上でも意見が分かれていますし、法律の専門家の弁護士の間でも意見が分かれています。

言ってみれば前科は、曖昧な解釈がされているのですね。

例えば、犯罪をしたという前科の事実は一生消えるものではありません。

過去の事実なので、そのこと自体は変わりようがないですからね。

しかし役所の犯罪人名簿の記載という点での前科は、一定期間経過するとこれは消えてしまいます。

具体的には、懲役・禁固刑は10年、罰金刑は5年を経過すると犯罪人名簿からは消去されます。

この犯罪人名簿からの消去は、刑法27条及び34条の2に定められた刑の言渡しの効力の消滅に準拠しています。

過去の最高裁判決では

過去の最高裁判例では、

「刑法三四条ノ二- 1 -において、「刑ノ言渡ハ其効カヲ失フ」とあるのは、刑の言渡に基く不利益な法的効果が将来に向つて消滅し、従つて被告人はその後においては不利益な法律的待遇を受けないという趣旨と解すべきである。
刑の言渡があつたという事実は、すでに存在する客観的な過去の社会的出来事であるから、後になつてこれを消滅せしめることは事物の本質上不可能であることは当然である。だがしかし、將来に向つては、過去に刑の言渡がなかつたと同様な法律的待遇を、被告人に對して與えることは法律的価値判断の問題として可能である。」最高裁判所昭和29年3月11日第一小法廷判決

とされています。

簡単に説明すると刑法34条の2について、

「刑の言渡しの効力の消滅とは、不利益な法律的待遇を受けないという趣旨であり、刑の言渡しを受けたという事実そのものまでなくなるわけではない」

と判断しているということです。

このように刑の言渡しの効力の消滅=前科の消滅といえるかどうかは、微妙なところとしか言えないのですね。

刑の効力が消滅した前科を申告しなくていいの?

では刑法27条及び34条の2に定められた刑の言渡しの効力が消滅したら、履歴書の賞罰欄や、面接の質問で前科を聞かれたときに、申告しなくてもいいのでしょうか。

仙台地方裁判所判決昭和60年9月19日(通称マルヤタクシー事件)では、

「既に刑の消滅した前科といえどもその存在が労働力の評価に重大な影響を及ぼさざるをえないといつた特段の事情のない限りは、労働者は使用者に対し既に刑の消滅をきたしている前科まで告知すべき信義則上の義務を負担するものではないと解するのが相当であり、使用者もこのような場合において、消滅した前科の不告知自体を理由に労働者を解雇することはできないというべきである。」

と判断をしています。

「特段の事情のない限りは、刑の効力が消滅した前科は申告する必要はない」という判決なのですね。

この判決を前提に考えると、懲役・禁固刑は10年、罰金刑は5年を経過したら、前科の申告をする必要はないということになります。

ただこの判決は、解雇はできないといっているだけですし、地裁の判決にすぎないというのも事実です。

この判決で100%申告義務がないかというと、やはり微妙であると言わざるを得ません。

面接の質問で前科を聞かれたときに正直に話すかどうかは、結局は自分次第と言えるのかもしれませんね。

前科は採用の際にばれるものなの?

根本的な話として、自分の前科は採用の際にばれるものなのでしょうか。

はっきり言って、一般的な会社ならば過去の前科についてばれる可能性は少ないです。

例えば、ネットで検索して名前が出てこなければほとんどばれないでしょう。

一般的な会社は、ネットで検索するぐらいしか、前科を調べる方法がないのですね。

ですので一般的な会社の採用では、前科の過去がばれる可能性はほとんどないです。

前科をチェックされることもある

しかし一定の職業では、前科など過去の前歴・経歴をチェックすることがあります。

これは、バックグラウンドチェックやリファレンスチェック、前歴調査と呼ばれるもので、

「外資企業」
「金融機関」
「警備会社」

などでは、前科・前歴がチェックされる可能性が高いです。

これらの会社は、非常に高い信頼性が求められています。

ですので採用する際に、採用予定者の前歴を身辺調査・身元調査して調べるのですね。

このような前歴調査を専門とする、探偵のような調査会社が世の中にはたくさんあります。

これらの調査会社は、実際に聞き込みをしたりして前歴調査や身辺調査をするのです。

このように、過去の前科をチェックする厳しい業界があるということも覚えておきましょう。

採用されて就職後に前科がばれたらどうなる?

無事採用されて就職・転職が決まり、働きだしたとします。

その後に過去の前科が判明した場合、どうなってしまうのでしょうか。

これは先に取り上げた「仙台地方裁判所判決昭和60年9月19日(通称マルヤタクシー事件)」の事例と同じ状況ですね。

マルヤタクシー事件を踏まえて考えると、特段の事情がない限り解雇をされることはないのかもしれません。

現実は厳しい

しかし現実には、何らかの懲戒処分を受ける可能性はあります。

また、会社内での扱いが悪くなったりすることは十分に考えられます。

先の判例にかかわらず、解雇を言い渡される可能性もないわけではありません。(判例はあくまで判例にすぎません)

もし前科を申告せずに採用されたとしても、それが就職後にばれるとやはり問題が起こる可能性は高いです。

聞かれていなければ問題なし

もちろん面接で何も聞かれていないなど、嘘を付いていなければ何の落ち度もありません。

虚偽の申告をしたわけではないので、堂々としていればいいのです。

こちらから前科を申告する必要はないので、聞かれていないのなら答える必要はありませんからね。

もし前科があって就職した後に前科がばれても、前科や犯罪歴について聞かれていないのなら、問題がないということですね。

何らかの懲戒処分を受けたのなら、それは不当処分です。

弁護士などに相談をして、きちんと対処しましょう。

前科と前歴の違い

前科と同じような言葉で、「前歴」がありますよね。

前科と前歴はどう違うのでしょうか。

前科は先に述べたように、裁判で有罪判決を受けた経歴を指します。

一方の前歴は、捜査機関により犯罪の被疑者として検挙された事実を指すことが一般的です。

例えば、警察に逮捕されて「起訴猶予」「不起訴」になった場合は、前科はないけれど前歴はあるということになります。

また逮捕されなくても、犯罪捜査を受けたその履歴があれば、前歴は残ってしまいます。

こちらも前科と同様に法律用語ではありませんが、一般的にはこのように考えられているのですね。

もし過去に逮捕された事実があれば、前歴としてそれは警察や検察に残っています。

各地の地方検察庁が管理する前科・前歴に関する情報は、消滅することなく一生消えることはありません。

逮捕された過去は、前歴として一生警察や検察のデータベースとして残ってしまうということです。

しかし警察や検察のデータベースは、一般市民が知りうることのできない情報です。

あまり気にする必要はないでしょう。

前歴を申告する必要はあるの?

履歴書の賞罰欄や、面接で前科や犯罪歴を質問されても、前歴を回答する必要はありません。

前歴は有罪判決を受けたわけではないので、罪ではありませんからね。

ただ逮捕されてそれが新聞やインターネットで報道されたときは、前歴がばれることがあります。

特に自分の逮捕歴などがインターネットに残っているときは、チェックされる可能性があるということです。

基本的に前歴は就職や転職に影響しませんが、まれに影響することもあるのということですね。

まとめ

就職・転職の際に、前科をこちらから聞かれてもいないのに申告する必要はありません。

履歴書の賞罰欄も、賞罰欄のない履歴書を選べば問題ないでしょう。

問題は、面接で前科や犯罪歴を質問されたときです。

基本的には質問されたなら、正直に回答する必要があります。

しかし正直に回答すると、採用されないことが多いのも事実です。

正直に申告するかどうかは、本人自身の考え方ひとつといえるでしょう。

世の中には前科があっても、更生していれば受け入れてくれる会社もあります。

ぜひ就職活動を頑張って、いい会社へ就職してくださいね。

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