裁量労働制には、当然ですがメリットとデメリットの両方があります。

しかしこの裁量労働制は、導入企業側にメリットが多くあり、労働者側にはデメリットのほうが大きいのが現実です。

よく裁量労働制の求人募集を見かけることがありますが、転職・再就職をするときには注意が必要です。

労働者にとっての裁量労働制のメリットとデメリットをよく考えて、転職をしなければなりません。

特にシステムエンジニア(SE)などのITエンジニアは、裁量労働制で求人募集されていることが多いので、気を付けてください。

労働者側から見た裁量労働制のメリット・デメリット

  • 裁量労働制のメリット
  • 自由度が高まる

  • 裁量労働制のデメリット
  • 実労働時間が増える

 

本来の裁量労働制は、従業員を時間に縛ることなく自由に働かせることにより、効率的に仕事ができ、モチベーションを上げることで企業も従業員もWin-Winになるための制度です。

もちろん本来の裁量労働制の使い方をして、業績を上げている会社もあります。

しかしこの裁量労働制を、企業の都合のいいように悪用している会社が多いのが現実です。

いわゆるブラック企業が、この裁量労働制を悪用して、従業員をこき使っているのですね

では裁量労働制の、労働者側から見てのメリット・デメリットにはどのようなものがあるでしょうか。

裁量労働制のメリット

裁量労働制のメリットは、「自由な働き方ができる」ことです。

裁量労働制は、1日のあらかじめ想定した労働時間に賃金を払う「みなし労働時間」が定められています。

「この仕事内容ならばこれくらいの労働時間だろう」とみなし労働時間が、想定されるのですね。

出社時間という概念はなく、みなし労働時間で定められた仕事量をこなせば、何時に出社して何時に退社しようと自由です。

例えば8時間のみなし労働時間を、効率よく5時間で終了できるなら、12時から5時まで働くだけでもいいのですね。

このように、労働者の自由度の高い面が、裁量労働制のメリットと言えるでしょう。

しかし現実的には、このような理想的な運用がされていません。

導入企業によって、悪用されていることが多いのが現実です。

裁量労働制のデメリット

裁量労働制のデメリットは、「実労働時間が増える」ことです。

もしあなたが悪徳ブラック企業の経営者だとします。

この裁量労働制をどのように利用して、より大きな利益を生み出そうと考えますか?

実質残業代なしで働かされる

私ならば、みなし労働時間での仕事量を限界まで増やすことを考えます。

そうすれば、今まで支払ってきた残業代を支払うことなく、同じだけの仕事量を従業員に課すことができますからね。

わかりやすく説明すると、いままでの定時+残業での仕事量を、みなし労働時間の中にまとめてしまうのです。

こうすると、残業代を払う必要がなくなるので、会社としては利益が大きくなります。

裁量労働制を導入するときには、労使交渉が必要なのでこう簡単に物事は決まりません。

しかしブラック企業では、労働組合が非常に弱いケースもよくあります。

そんな会社ではワンマン社長の一声で、みなし労働時間での仕事量が決定されてしまうこともあるのです。

裁量労働制が適用できない職種にも適用

適用範囲が法律で定められている

裁量労働制は、

1・専門業務型裁量労働制

2.企画業務型裁量労働制

の2種類の対象業務においてのみ、適用することが認められています。

専門業務型裁量労働制は、下記の19業種に限られています。

1. 新技術の研究開発等
2. 情報処理システムの分析・設計
3. 新聞・出版・テレビ等の取材・編集
4. デザイナー
5. プロデューサー・ディレクター
6. コピーライター
7. システムコンサルタント
8. インテリアコーディネーター
9. ゲーム用ソフトウエア開発
10. 証券アナリスト
11. 金融工学等の知識を用いて行う金融商品の開発
12. 大学における教授研究
13. 公認会計士
14. 弁護士
15. 建築士
16. 不動産鑑定士
17. 弁理士
18. 税理士
19. 中小企業診断士

 

企画業務型裁量労働制は、企業の中枢部門において企画・立案・調査・分析の業務を行う一定範囲のホワイトカラー労働者を適用対象としています。

本来はこのように適用範囲が決まっているのですが、悪徳ブラック企業は対象業務以外にも裁量労働制を適用します。

悪徳企業は一般労働者にも適用する

例えばシステムエンジニア(SE)は、この裁量労働制が適用されることがあります。

これ自体は違法ではありません。

しかしすべてのSEに裁量労働制を適用するのは、法律の拡大解釈となり違法性があります。

SEが裁量労働制で働くには、「情報システムの分析または設計」に該当する仕事をしていなければいけません。

上司の指示のもとシステム開発のプログラムをしている「プログラマー」といえるSEには適用できない制度なのです。

実際はプログラマーの仕事内容なのに、SEとして働いている「名ばかりSE」の方に、裁量労働制を適用することは違法と言えるのですね。

名ばかりSEだけでなく、単純な営業職や企画職などでも労働裁量制を導入しているブラック企業があります。

このように裁量労働制を悪用する企業は多いですので、注意する必要がありますね。

転職では裁量労働制の求人に注意が必要

転職活動をするとき、求人募集の情報をしっかりとチェックしなければなりません。

求人票に裁量労働制を明示しなければならない

平成29年職業安定法の改正で、2018年1月からは「求人票」に裁量労働制が明示項目になりました。

求人詐欺・偽装求人などのトラブルを防止するために、求人が裁量労働制であることを明らかにする必要があるのですね。

実はこれまでは、内定後の雇用契約するときに、裁量労働制であることが判明するということもありました。

言ってみれば、だまし討ちのようなものです。

このようなだまし討ちをされるリスクはなくなりましたが、これまで以上にしっかりとチェックをしなければいけません。

裁量労働制の内容を質問する

もし裁量労働制の会社の求人に応募するのなら、面接で裁量労働制の内容についてきちんと質問をしておきましょう。

裁量労働制とは名ばかりの、残業代なしで働かされるだけの仕事かもしれませんからね。

もし質問することができないのなら、裁量労働制の求人に応募することは避けたほうが無難です。

もちろんすべての裁量労働制がダメなわけではありませんが、一定の確率でブラック企業が隠れていることは確かです。

「君子危うきに近寄らず」の精神で、裁量労働制を避けたほうが安全なのかもしれないですね。

どんな質問をすればいい?

では裁量労働制の導入企業の面接では、どのような質問をすればいいのでしょうか。

みなし労働時間・実質労働時間を質問する

「みなし労働時間は何時間ですか?」

「平均的な実質労働時間は何時間ですか?」

この2種類の質問はまずしておきましょう。

「みなし労働時間」と「実質労働時間」ですね。

特に実際の従業員が、平均どれくらいの実質労働時間なのかは質問しておきたいです。

勤務時間について質問する

裁量労働制は、本来は勤務時間を自由に労働者が決めれるものです。

例えば、9:00~17:00ではなく、12:00~20:00でもいいのですね。

よく求人票や求人募集に、

「勤務時間9:00~18:00(裁量労働制)」

などと記載されていますが、これはちょっと矛盾する話ですよね。

裁量労働制は、みなし労働時間の仕事量をこなせば、いつ出社・退社しようが自由な制度ですからね。

この勤務時間を曖昧に答える会社は、裁量労働制を悪用している可能性もありますので注意が必要です。

裁量労働制は甘くない

裁量労働制は、政府の言うような労働者の自由な働き方といった甘いものではありません。

みなし労働時間内にしっかりとした仕事量をこなさなければなりませんし、ノルマや締め切りを課せられることも普通の話です。

ノルマや締め切りがあると、納期に追われて深夜まで働かされることもよくあります。

特にブラック企業にとっての裁量労働制は、社員をこき使うための道具であるということを覚えておきましょう。

転職や再就職をするときには、裁量労働制という甘い言葉に注意してくださいね。

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